Code for History

"Code for History"はIT技術を歴史学上の問題の解決に使うコミュニティです。強調したいのは、我々にとってIT技術は「手段」であって「目的」ではありません。「目的」は歴史学上の問題を解決する事であって、必要であればITでない手段も活用します。常に最優先なのは、問題を解決することです。

ATR Creative社内での2012年2月17日のメール「大塚のちずぶらりへの思い」無編集掲載

id:monomoti と最近、同じコミュニティに属する以上、お互いやり難いし表面上だけでも停戦*1しようということで手打ちをしたのだけども、その時の打ち合わせで、一番近くで全ての経緯を見ていたにも関わらず、私が辞めるにあたって出していた条件をことごとく反古にされて、結果「それなら話が違うから辞めない」と主張していたにも関わらず、その辞めない主張をしていた事をid:monomotiが把握してないと知って愕然となった。

で、最近もまたTwitterでやり取りして、なんと辞めないと言っていた事以前に、俺が条件付きなら辞めると言い出した理由が、高橋徹とうまくいかないから嫌になって辞めると言い出したのだ、と思われていて、これまた愕然となった。
公開の場で宣言してるのに、いい加減にしろよ…。

実際にはこうだ。
株主、親会社から黒字化圧力がかかり、社長も原価意識を持って仕事しろ、と社員一同集めて訓示し、社員全員大幅な給与削減になった。
俺はこの危機を効率化でみんなで乗り切ろうと檄を飛ばした
それに、高橋徹が、創造性潰されてたまるか、と異を唱え、大喧嘩になった。
夜中、てめえ辞めさせるぞ、と脅迫メールまで届いた*2
その状態を受けて、「脅迫してくるほど一緒にやりたくないのなら(私が、ではない。高橋徹側が)、私はATRから禄が欲しいわけではなく、ちずぶらりやりたいだけなので、外でやらせてもらえるのなら、辞めてもいいですよ(そうすれば経営状況もマシになるでしょう)」という文脈で申し出たわけです。

ポイントは、一緒にやれないのは「私が」ではなく「高橋徹側が」だし、辞める理由は「人件費が削減されてみんなの事業が楽になるのなら」だし、辞める条件は「外部でちずぶらり継続開発させてもらえる事」だったわけで。
それが、こちらの条件は完全反故にされてATR側だけおいしい所取ったのが事実。

にも関わらず、ATR社内では、俺が高橋徹と喧嘩して勝手に辞めて、その後ゴネて事業邪魔して、みたいな理解に洗脳(笑)してるっぽい。
故に本来、最低でも辞めさせられたことで一時的に事業楽になったはずで、その事は感謝されていいはずなのに、実際のATR Creative元同僚達からの扱いは無関心かパブリックエネミー扱いw
そりゃ、この経緯が伝わってないんなら当然だわ。
この経緯が伝わってまで、同僚達の思うところに変化がないのであれば、それは人間としてどうよ、と思うけどね。

で、とりあえずこの経緯が嘘ではない事を示すために、発端となったメールをそのまま無編集で公開します。
これは社内でも全社員に同報して送ってるので、改竄とかあればすぐ判ります。
肝腎の部分は最後尾ですが、当時の社内の状況等も判るよう、メール全文をそのまま公開します。


大塚です。

今回の件でいくつか思いを話させて下さい。

1:
大塚は絵地図にしろ古地図にしろ、非線形変換を加えるべきではないという点では価値観を同じくするので、ちずぶらり事業にジョインしましたが、そこに求めるコンテキストはやっぱり若干違うのだなというのが最近の感じです。

元々私の絵地図/古地図への取り組みは、前職マピオンで絵地図の集約サイト作って絵地図描きの受注事業(絵地図のpixivみたいなの)始めたいと思ったのと、伊能忠敬の大図百数十枚を繋ぎ合わせて、一枚物にして地図サイトでグリグリ動かしたい、というところから始まってます。
つまり、今回の迅速測図ではないですが、非線形変換は加えないものの、連続した地図は一枚物にまとめて見たい、というのは当初からの願望としてあるのですね。

というのも、個別の図葉は個別の図葉としてみる事でしか得られないコンテキストがある、というのは判ります、判りますが一方で、大きな一枚物にしないと見えないコンテキストというのも確かにあるのですね。
例えば伊能図は、当時としてはむちゃくちゃ正確な地図ですが、並べて一枚物にして見ると、実は九州が実際よりも少し東西に狭くなっているのが判ります。
これは当時の測量技術では、緯度の同定は星の高度等で比較的簡単だったのですが、経度の同定は非常に難しく、少しのズレが溜まりに溜まって大きくズレたものと思われるのですが、そう言うのは繋げてみて初めて判る事で、個別の図葉をただ眺めていても全く気付けない事なのですね。

なので、コンテキストを重視されるのは判るのですが、別の見方には別のコンテキストがあるのだよ、という事に気付いてほしいのです。
今でも、ちずぶらりで伊能図一枚もの作って出したい、という思いはあります(なので、マピオン時代に関わっていた東大の有川先生も紹介しました)。
そういう視点を持ってる側として、同じように複数図葉の一枚もの俯瞰コンテキストである迅速測図TMSはちずぶらりの扱うものではない、と言われると非常に辛いです。


2:
また、強み会議で「ちずぶらりの強みは、正確な地図も歪んだ地図も共に扱える事」と確認しましたが、これに対する「これに賭ける思い」は私は非常に大きいです。
正直言って、市場評価的に時層地図ごときに遅れを取ってる感があるのは、個人的には非常に屈辱です。

知的な人ほど、この可能性に気付いてくれているからこそちずぶらりに目をかけてくれています。
が、マスを相手にしたサービスをずっとやってきましたから判りますが、アプリ事業で相手にすべきマス層には即物的な価値しか伝わらないので、マスの価値判断としては今でも「時層地図>ちずぶらり」です。
何故かというとちずぶらりには、即物的にきっちり時代の変遷が紛れもなく判る、といったコンテンツがないから。
きっちりこれはこれ、あれはあれを伝えてくれる時層地図や今昔散歩に対し、もやもや感満載のちずぶらりのコンテンツは、マス層にはどうしても「なんちゃって」時層地図や今昔散歩に映ります。

そうじゃないんだ、コンテンツさえあればちずぶらりは時層地図や今昔散歩と同じものは実現できるし、それに加えてプラスアルファで歪んだ地図まで扱える最強ソリューションなのだ、と言う事を私はマス層に知らしめたいし、そのためにベースラインになるような迅速地図、5000分の1地図については早く取り込みたい、とずっと思ってました。

また、GISジオメディア仲間からは迅速図、WMSやTMSくらいすぐ対応できないのか、と言われた訳じゃないですけど思われてるんじゃないかと感じますし、そういう焦りもあり。
徹さんは以前のやり取りで、自分のプロダクトとして自信を持って出せない、とおっしゃってましたが、私だって仲間の目意識していろいろもやもやしてるんですよ…。


3:
真知さん徹さんから見れば、外様の大塚が事業方針に口出しするのはおかしいという感覚かもしれませんが、飽くまでこれまでの経緯を考えて私個人の主観から見ると、それは若干納得いかないんですね。

そもそもちずぶらり事業にジョインして欲しいと徹さん真知さんから誘われた時、当初は新会社を作るから、出資してくれれば社長に迎えるという形で誘われたはず。
出資したくてもない袖は振れないので断りましたが、結局プロデューサという肩書きでジョインする事になったので、私個人は完全に事業をハンドリングするつもりで事業にジョインしてます。
(後で聞くと、真知さん徹さんはプロデューサという言葉の意味が判ってなかった、事業を任せるつもりなどなかった、という話でしたが)
いざジョインしてみると、まともにソースコードもメンテできてない状況だったので、なし崩し的に私が実装を担当する事になり、実装を担当していれば事業のハンドリング等できませんので、実態に合わない肩書きは邪魔にしかならないので徹さんとの肩書き交換を申し出て、徹さんがプロデューサ、私が技術ディレクタという話になりました。

が、私の主観から見ると、徹さんのビジネスプランに感服したから譲ったというよりは、私と徹さんと2人のプロデューサ候補がいて、そのうち実装ができない方がプロデューサを担当した、本来私の仕事だったのを預けているという感覚(飽くまで私の主観ですよ)しかないので、とはいえ別の人間が担当しているのですから全く同じ判断はあり得ないにせよ、私から見てあまりにもおかしい方針を立てられるのは承服し難く感じる、というところがあります。
預けてる感覚とは言え判断権を預けているという事は、何かあった時の責任の所在も預けているという事なので、責任を取っていただく以上最終的な判断権限は徹さんにあると思ってますが、とは言え経緯から考えると私の感覚はかなり一目置いていただいてもいいと思うのですよ。
なので、先のメールのように、『また、大塚さんにビジネス全体の意思決定を委ねるつもりもありません。』的な認識で居られるのを聞くと、ちょっと残念に感じます。


4:
そういう3つの経緯があるからこそ、私はずっと迅速測図はやりたいと思って来ましたし、事あるごとにやりましょうよと声を掛けては、顧みられないので悲しいと思っておりました。
徹さんはいつも大塚が一方的な正義を押し付けると言われますが、大塚はむしろいつも提案が無視されていると感じてますよ。

そういう状態のところに、真知さんが5000分の1地図について言及されたので、個人的にはキターーーーーーーーーという感じになったのが正直なところです。
コンテキスト的に同じものとかいう視点よりは、ずっと言ってきたものにやっと注目がきた、これこれ、いつも言ってきたこれですよ、すぐやりましょう是非やりましょう、という気分でWMS/TMSを紹介したものです。

そこに、俯瞰一枚物で見る事により得られるコンテキストもあるにも関わらず、これを見るのはちずぶらりではない、コンテキストの違いも判らないとは価値観が違いすぎる、等と言われると、これまで悲しい気分で我慢して来た立場から見ますと、それだけで徹さんの本意はどうあれこっちからは煽りに感じてしまったのですね。
煽られた→煽り10倍返し、してしまったのも悪いとは思いますが、その辺の気持ちも汲んでいただけると大変助かります。
お願いします。


最後に:
もし事業運営上本当に雇用を維持できない&徹さんのビジネス方針と大塚の方針があまりにも相容れな過ぎるならば、大塚は条件付きで辞めて個人事業主になってもいいです。
大塚が今辞めたくない理由は、安定した雇用が欲しいというよりは、私が提示したちずぶらりの強み、の方向性に沿ったビジネスプランに沿ったちずぶらり事業に自信と思い入れがあるからこそ、それから離れたくない、というだけなので、それが外部でもできるならば、特にATR-Pにこだわる気もありません。
ATR-Pが価値がない、選択しないと判断したビジネスの方向性であれば別に外部に存在しても問題ないはずなので、ちずぶらり技術を使いつつ私のビジネスの方向性に沿った事業を行う権利を私に与えてくれるならば、私は外部に出て別事業を起ち上げてもいいです。

具体的には、
1:大塚が『ネット地図を取り巻く環境変化』資料で示した、正確な地図と歪んだ地図を両方扱える一般ユーザ向け地図プラットフォーム事業をちずぶらり技術を応用して展開する事を認めていただく。
2:その一実例として、震災記憶地図のアプリとサイト(或いはGIS的に実現したコンテンツだけを分離して、その部分のアプリだけでもいいです)の運営を引き継がせていただく。
3:ePubを使ってのちずぶらりは、GeoPdfを紹介した頃から電子書籍にちずぶらりを埋め込むのは大塚の発案であり夢なので、行う権利をいただく(排他的でなくてもいいです。ATR-P側もやっていい、という形で)。

上記が可能であれば、私は外に出る事にさほど抵抗はありません。

*1:もちろん、id:monomotiとだけであって、ATR Creativeと停戦する気等さらさらないのは当然。

*2:正確には、脅迫メールが届いたのは効率化問題での衝突ではなく、ちずぶらりとGISを融合させるか否かの衝突の後なんだけど、俺が辞めてもいいよ、と言った理由に同社の経営状況が深く関わっているのを判り易くするために、若干順序を編集。というか、特定の衝突というよりはこの頃は事ある毎に煽られてばかりだったので衝突ばかりしていた

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